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【映画企画】バウスシアター取材


3:目玉企画・爆音映画祭 「爆音上映は特殊な方式でやっているので、限りなくその場でないといけない。そういう一回性っていうものはあったと思うんですよね」


DVDなどの普及によって映画が100円前後で観られるようになって、そうなると「1500円出して劇場に来る価値」みたいなものをいろんな人が見いだせなくなっているのではないかと思います。そういう中でやっぱり「劇場体験」をテーマとして「いろいろ試みていかなきゃいけないな」という危機感はあったと思うのですが、その「劇場体験」の価値を、バウスさんでは主にどういうところに置いていたのかなということを聞いてみたいです。

爆音上映というのは限りなく一回性に近い体験なんですよね。本来、映画はいわゆる複製芸術なので、どこの映画館に行っても同じものが観られるんですけど、爆音上映は特殊な方式でやっているので、それは確実にバウスシアターでしか体験できない。そこが一番の強みだったのかなと思います。


爆音映画祭がすごく有名になっていて、いろんな方が来て、感想がいろんなところで言われていると思うのですが、そういった反響を感じたエピソードとか。どういう反響があるかをお聞きしたいです。

バウスシアターっていう劇場は知らなくても、「爆音映画祭」とか「爆音上映」という言葉が一人歩きし始めたこととかですね。爆音映画祭を始めた当初は、年配の男性客が目立ちました。いわゆる映画を見慣れているコアなお客さんです。ところが回を重ねていくうちに、客層がどんどん若くなってきたり、グループで来るお客さんが増えてきまして。とても映画館らしくない、ライブに来ているような感覚でわぁわぁ言いながらやってくるとか。ビールがすごく売れるとか。


「ミニシアターがどう生き残っていけるか」というのを考えたときに、街に密着するという生き残り方が有効な戦略として考えられるかなと思ったのですが、どうでしょうか。ミニシアターの生き残り戦略を伺いたいです。


とにかくいろいろなお客さんに向けていろいろな映画を上映する、ということではないでしょうか。バランスよくやるというのが望ましいと思っています。それから立地条件や劇場の客席数の問題もあります。たとえば山田洋次監督の最新作を上映したい場合席数が50席だと絶対にブッキングできないですよ。単純な話で、近隣の大きな劇場と吉祥寺の小さな劇場を比較すれば、当然キャパの大きい方が儲かるので、配給会社は客席数の多い劇場と契約するでしょう。最低でも100席はないと、そもそもメジャーの作品をブックできません。かつ、スクリーン数が最低二館ないと、複数の作品を上映して二面性を出すことができない。そうすると100席+100席=200席ぶんのスペースがないといけない。結構な広さと場所が必要なんですよね。それで月々いくら必要って考えてみると、「無理だなあ」って気分になってしまうんですよね。特に吉祥寺で「小さくてもいいから映画館をやっていこう」っていう気持ちがあっても、生き残っていくためにはそれなりの条件がなければだめだと思いますし。今、どんどん映画の見方が変わってきていて。携帯で映画とか観たりしますよね。そういう風に、映画の見方が変わってきているときに、それでも「映画館で観るのはいいね」って言ってもらえるためには、それなりのサイズがないと勝負できないと思うんですよね。そういうものを批判しているわけではなくて、結局、淘汰されてしまうのではないかと危惧しています。


吉祥寺という土地柄にはこだわりはありましたか?

上映する番組を決めていくうえで吉祥寺の空気感とか土地柄はやっぱりどうしても気にしています。よく言われるのは、商業の街でありながら、井の頭公園に象徴されるような、ある種のんびりした空間がありますよね。中央線、たとえば高円寺とか西荻窪とか中野とかにも共通するのですが、のんびりした空間がこの吉祥寺にはあって。そういう雰囲気に映画があっているかどうかっていうのは結構気にしています。たとえば、吉祥寺はホラー映画が弱いんです。ホラー映画に強いのは池袋だったりするので。池袋は学生が多いんですよねこのような、土地のムードだったり、空気感に寄り添うような努力はしていました。


バウスシアターが無くなると爆音映画祭もなくなってしまうのですか?

それはまだわかりません。ただ、先程お話ししたように、バウスはたまたまコンサート用のアンプとスピーカーがあったので、爆音上映に関しては大規模な機材投資をしていないんですよ。お金をかけていない。ところが、アンプとスピーカーって値段が高いんですよ。一日借りるのも何十万、下手すれば何百万してしまう。高価なものなので、別のところで企画すると単純に音響機材を借りる予算が必要になってくるわけです。それってもう企画自体の収益と同じくらいの予算が必要になってきてしまうので、誰もやりたがらないですよね。たとえば助成金が出ますとか、元から音響機材が揃っている施設が名乗り出れば、続いていく可能性は十分あると思います。爆音映画祭の一番の利点は、お金をかけずに出来たということと、樋口さん含めバウスシアターの従業員のマンパワーがあったからこそだと思います。


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