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【ゲーム企画】ときど選手取材(プロゲーマー)



――――さまざまなタイトルで好成績を収めていらっしゃいますが、違うゲームをプレイする際に混乱しないコツはありますか。

似たようなゲームの間で混乱してしまったりすることはありますが、そこは練習量でカバーします。普段毎日二時間ずつ触るみたいなことをやっていれば、混乱する状況にはあまりならない。ただ、いいものは見せられませんよというのが僕の考えです。それくらいのやり込みで大会で勝とうとすると、所謂フェアでない部分を前面に押し出さないと、少なくとも僕は勝てない。それはあまり見栄えのいいものではないし、昔からそのゲームを楽しんでやってきた人たちの思いを汲み取れないようなプレイになってしまいます。要は誰にでもわかる強い戦略をいかに効率よくやるかということになってしまうから、最近は控えています。あと、それってゲームが上手くならないんですよね。勝つのが上手いのであってゲームが上手いのではない。僕は全然気づかなかったんですけどね。勝てばいいじゃんって思っていた。勝っているから気づかなかったけど、地道にやっている人とはすごい差がついてしまっていて、アンフェアなものが修正されたときに僕は勝てなくなった。今後、競技性が高まっていくということは、当然そういうフェアじゃない部分はどんどん取っ払われていくだろうし、そうなったときに勝てないんじゃ寂しいですからね。

 

―――格闘ゲーム以外のゲームをプレイされる予定はありますか。

現状、格闘ゲームをおろそかにするほど魅力のあるタイトルはないかな。あと、格闘ゲームというジャンルならいろんなゲームをやってきたし、それなりにいけると思うけど、格闘ゲーム以外のジャンルでもそれぞれのゲームジャンルを10年かけてやってきた人たちがいるわけで、そこに参戦してそれなりの位置を狙えるかっていわれるとそうではないと僕は思ってしまいますね。あ、遊びではやりますけどね。でも競技者として上を目指そうという気はないです。

 

―――『東大卒プロゲーマー』の中にゲームから学んだことが勉強に生かせたというお話がありました。世間ではゲームは勉強に悪影響だといわれることがありますが、それに対しどうお考えですか。

ゲームが悪影響だといわれるのは楽しいからついついやりすぎちゃうからであって、ゲームそのものが悪ではないですよね。勉強に息抜きは必要です。それが僕にとってはゲームで、ゲームしかやらなかったからどうしたら勝てるんだろうって追求した。一つの学問について掘り下げる研究と違って、受験勉強がいい点数を取ろうとするための所謂お勉強というなら、僕がゲームで取り組んでいたことの方が頭を使うことが多かった。それに、ゲームをしっかりやっていれば受験勉強で必要な考え方は身に付きます。答えがあるのが受験の問題だけども、ゲームで問題に相当するものは対戦相手で、相手も変化していろいろなものを投げかけてくる。ゲームのいいところは、答えがあるのかもわからない時にいろいろ探すのが楽しいことです。基本的にいかに効率よく知識を詰め込めるかが受験勉強なのに対し、ゲームにおけるいかに勝つかを追求するという行為は本当はちゃんとした学問に通ずるところがある。だからゲームはただの勉強よりも一歩深いところにあると思っています。

 

―――ゲームをやりすぎてしまわないための切り替えはどうしたらできますか。

僕の場合はゲームと勉強を同じにとらえていました。切り替えがうまくできないのは、ゲームの勉強の優先順位に差がありすぎてしまうんですよね。勉強も勉強でやったら楽しいものだと思っていれば、そんなに差はないだろうと思うんですけどね。人間って理屈じゃなくて感情で動く動物なので、自分で自分のモチベーションを見つけられるようになれば、勉強にも取り組めるようになると思います。僕はいい点数を取れば周りに認めてもらえて評価されるというのが快感だった。本当に勉強が嫌いだっていう人にも、なにか少しでも楽しみ方を見つけてほしい。やっぱり勉強って若い間は強いられているものじゃないですか。それで他人と比べられるし評価もされるから損だよね。

 

―――ゲームでは新しい技が出せるようになるなど、練習したことがすぐに成果になって表れますが、勉強や研究は結果が出て評価されるまでが長く感じられます。そのために楽しみ方を見出すのを難しいと感じてしまう人が多いですよね。

たしかに、ゲームはやり始めはやったことがすぐできるようになるし伸びしろもあって成果がわかりやすいですよね。だから、新しいタイトルはちょっとやるとすごい成果が出て楽しい。でも結果的に、時間が経つと、同じような動きを皆ができるようになります。そのあまり差が出ないようなところでほんのちょっとの差を作り出すために膨大な時間を僕らは割いている。

勉強に関して言えば、できない人がいきなり百点を目標にしても無理な話で、無理なものはやっぱり萎えちゃうから、目標の設定の仕方を考えなければいけないですよね。ちょっとずつでいいから前進していく。成長することを、知識をつけていくことを目標にしてモチベーションにするべきなんじゃないかな。

 

―――逆に研究で培ったことがゲームで生かせたということはありますか。

僕はゲームでものの考え方や取り組み方を学んだから研究の世界に行ったときに「あっ、ゲームでの取り組み方ってそういう所にも通ずるんだな」というのが第一に思えたことなんだけれども……。

研究生活で一つすごく良かったのは、人との出会い。『東大卒プロゲーマー』にも出てきたけどSさんという本当にすごい情熱のある人に出会えて、自分のモチベーションになっている。学問の世界はちゃんとまじめにやることが評価されやすい世界だから、そういう人に出会える確率が高い。やっぱ出会いって大切ですよね。そういう人には元気をもらえるし、そのおかげで今も頑張っていられる。あの人に顔向けできないような体たらくにはなりたくないですから。

 

―――ゲームのどこに魅力を感じますか。

結局行き着いたのは人間なんですよ。いろんな人と出会えていろんな体験をできたのが僕はゲームの世界だったから。最近まで気付かなかったんですけどね。和を大切にするプレイを最近までしなかったし、逆に新しい人をコミュニティから除外してしまうようなプレイをしてたから。本当はゲームの対戦相手との早いやり取りが好きっていうべきなんでしょうけどね。

ただ僕の本当のゲームが好きな一番の理由はやっている人たちが面白い人が多くて、今思えばすごい変な人たちがやってて、そこで多くのことを学んだってことかな。ゲームっていうものが勝負の世界で熱くなりやすいという特性があるから、そういう人たちが集まりやすいんだと思います。

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