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松丸本舗へ行ってきた

東京駅丸の内オアゾ4階、丸善の一角に、その空間はある。

中に入れば書棚にぐるり囲まれて、本と本とのつながりを感じながらうろうろできる。棚の手前にも本が横に積んであったり、扉があったりして、奥のほうの本を見るためにはちょっと手を伸ばして動かさなければならない。ただ見るだけではなく、身体的に本と触れ会う場所となっている。


いったいどのようにしてこのような書店はできているのか?


これからの書店はどうなっていくのか?


なんでも予約を取ればブックショップエディターの方が案内してくれるらしい。
聞きに行ってみた。



店の前でブックショップエディターの女性と合流し、入り口の棚の前でしばし話を聞いた。


「同じ情報でも媒体によっていうことは変わるんですね!
テレビはテレビの悪口言わないし、新聞は新聞の悪口言わないでしょ。そうするとほら、本って一番自由なのよ。」


「あなたたち、本を選ぶとき、どう選びます?」
――ぱらぱらします。
「まあ、そうね。でもね、一番大事なのは目次なのよ!目次は本の設計図でしょ。例えばこの本だと(その辺の本を手に取る)5章立ての本になってるじゃない。つまり、5本の柱でこの本は成り立ってるの。これでながれをしっっかりと頭に入れれば、作者の話をはいはいと聞く立場から、同じ目線で話をする立場になれるのよ!」
――目次を読むだけでそうなれるんですか?
「そうなの、すごいでしょ?」


「人は本を読むことで本を生み出してるでしょう?ミームってあるじゃない。もしかして、人間はただ本が繁殖するための乗り物なんじゃないかって。まるで『ポーの一族』みたいね。ここの本の並びは、もし本が生き物だったらこんなふうに集まるだろうな、というふうに並んでるの」
――どんな基準で本を選んでるんですか?
「基本的には松岡正剛さんの千夜千冊で選ばれた本なの。そこで紹介されてる本は3000冊しか無いけど、ここには三万冊もあるのよ!千夜千冊で紹介された本を骨組みにして、そこに筋肉を付けるように、間をつなぐ本をはさんでいるのよ!」
――これぜんぶ読んだんですか?
「あらあら!そんなことしたら目が潰れちゃうわよー」


――どうしてここ閉店しちゃうんですか?(この松丸本舗だが、9月の下旬に閉店してしまうという)
「あら、それねえ……。もともとここって、3年の予定でやってたのよ。その期間になったから、閉店ってことになっちゃったの。もうちょっと利益がでてたらまた違ったかもしれないけどねえ……。あ、あなたたちにぜひ協力して頂きたいのだけど、」
(店の奥の方へ行って、なにかカードを取ってくる)
「いまメッセージを集めてるの(松丸本舗facebookページ)今は30人ほどだけど、300人、3000人集まれば、人が動けば!お金も動く!そうしたら、なにか次へつながるかもしれないでしょう!」

ということらしい。
やっぱり売りたい本を売るのは難しいのか……。話の様子からして、経営的にはけっこう厳しそうな様子だった。


また、書店員さんにも話を聞く機会を得た。

――電子書籍は、本屋としてどう思いますか?
「新しい物が出てきたときはみんな戸惑うけど、それによってむしろ元のものが刷新されたりするかもしれないね」
――プロテスタントの登場によってカトリックの革新運動が起きた時のようにですか?
「そうそう、電子書籍によって、本関係者は、自分の扱ってるものが紙だとようやく認識できたんだと思います。それぞれ、紙にしかできないこと、電子書籍にしかできないことを推して、棲み分けて行けばいいんじゃない。テレビとラジオみたいに」

――これからの本屋ってどうなっていくと思います?
「大型書店やamazonだけが覇権をとっているような現状だよね。利用者にしても、大手書店だと、選択肢が多すぎて、結局行く人は、先にアマゾンか何かで調べて目処をつけてから来てしまう。松丸本舗のような、本との出会いがあるような、ちょっと小さい店もあっていいと思う。最近、けっこう増えてきてるしね」

など、面白い話を伺うことができた。
棚は非常に良質だし、店員さんも面白いので、閉店前に足を運んでみるのもいいと思う。色々と衝動買いしてしまいそうだが……。


最後になるが、案内してくれたブックショップエディターの方、話を丁寧に聞いてくれた書店員の方、ありがとうございました。