進化とは、動物が世代交代しながら姿形を変えて生き延びることである。
「種の起源」から250年以上過ぎたいま、このことは(少なくとも日本では)常識みたいになっている。
ところが、それについてしっかりしたイメージを持っている人は、一体どれだけ居るだろう。
殆どの人はせいぜい、ピカチュウがライチュウになるぐらいの理解が関の山じゃないだろうか。
そこで、この本である。
太平洋の真ん中に、ガラパゴス諸島がある。そこには、フィンチという種類の鳥がいる。
人間のいない島だったので、フィンチは人間を全く恐れず、手で捕まえる事ができる。
研究者のグラント夫妻は、ガラパゴス諸島の真ん中にある、ダフネ島のフィンチ全てに個体識別の印をつけ、一羽一羽のくちばしを計測した。
20年もの間。
そして、なにがわかったか。
島の環境は年毎に大きく変わる。
干ばつがあった年は、フィンチの餌となる木の実は少なくなり、
雨がたくさん降った年にはたくさん木の実がなる。
体が大きく嘴の大きいフィンチは、殻の固い木の実も割って食べることができるので、干ばつの年も生き残りやすくなるが、
子鳥のころは嘴が柔らかいので柔らかい木の実しか食べられず、しかもたくさん食べる必要があるので、普通の年では不利である。
よって、干ばつの年には、フィンチは嘴が大きくなるような方向に進化が進み、大雨の年にはその逆に進む。
その一年での平均の嘴の大きさの変化は、化石と原生生物を比べた場合の変化の一万倍にも及んだのだ。
つまり、進化ははるか昔の出来事ではない。
生物たちは、いま現在も激しく変化し、行きつ戻りつしながら進化を続けているのである。
といったことが、説得力ある(20年も嘴を測り続けたから当然か)筆致で、
背伸びした中学生にも読めるぐらいの分かりやすさと、おそろしいほどの精密さで書かれている。
進化と自然淘汰について知りたいなら、文句なしにお薦めの一冊。