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アラビア書道を見てきました?宮田江美子さん『Little Damascus 4』

名古屋で開催されていた宮田江美子さんのアラビア的書道展覧会、『Little Damascus4』に行ってきました。

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宮田さんは名古屋で活動されているアラビア書道家で、主にシリアやイランでアラビア書道を学ばれました。仮名書道のような儚さがお好きで、薄く淡い色を多く使っていらっしゃいます。ちょうどまさに冒頭のカードのような色彩です。アラビア書道は可読性を前提としていて(複雑化に伴いアラブ人すらよめなくなっているのですが…)、線をはっきりと描くことを好むため、このような儚いスタイルを好まない人もいるそうです。

宮田さんの作品は、ただ単に言葉を書くだけではなく、言葉の意味と文字の形を重ね合わせたり、複数の書体を組み合わせたり。他にも写真などの図像や別のアラビア書道の作品を背景として、その上に作品を重ねたものもありました。特に素敵だと思ったのが、マグレブ書体の上に宮田さんの作品を重ねたもの。天に伸びるマグレブ書体を背景として、上下にのびやかに描かれた作品がうまく重なりあい、非常に美しい構図でした。

アラビア書道の作品を生で見たのはこれが初めてだったのですが、宮田さんが丁寧に解説してくださり、大変勉強になりました。

何より衝撃を受けたのが、アラビア書道家は常によりよい筆記具を求めているということ。

アラビア書道では主に葦の筆(カラム、???)を使うのですが、人によっては葦ではなく竹を使ったり、案外割り箸が書きやすかったり、人それぞれです。紙も決まった紙があるわけではなく、常により書きいいものを探し求めているらしいです。優美な線をはっきりと描くために、アラビア書道は非常にゆっくりと書かれます。そのためか紙はつるつるとしてほどよくインクをはじき、かつ筆を滑らせやすいつるつるとした紙が好まれるそうです。案外カレンダーの裏が使いやすいみたいで、意外ですね…インクも様々で、イランの先生に日本の墨汁を買ってくるように頼まれたこともあるとか。艶があって気に入っているそうです。

一般に「書道」と漢字の書道と同じ訳語が当てられることが多いですが、やはりアラビア書道は似て非なるものだとつくづく感じました。文字の形も性質も漢字とは大きく異なり、アラビア書道が成立した背景も異なります。言うまでもなく文字を芸術として書く方法も異なり、アラビア書道と漢字の書道はお互いに違った美しさを持つと思いました。

また、日本という中東から遠く離れた地で育まれるアラビア書道はどのように発展していくのか、とても気になります。日本で有名な本田孝一さんや今回展覧会を拝見した宮田さん、このような書家がどのような作品を産み出していくのか、これからも展覧会に足を運ぼうと思います。

興味がある方はぜひ、ご一緒しましょう。

帰る時に素敵なカードを頂きました。二枚頂いたのですが、そのあと会った友人がとても気に入ったので一枚あげることにしました。その友人はアラビア書道はおろかアラビア文字の知識は全くないのですが、線や色彩の美しさに一目ぼれしてしまったようです。アラビア書道には人を惹き付ける不思議な力があるんでしょうかね。

余談ですが、名古屋でふらふらしていたら1940年代のチェコスロヴァキアの楽譜を発見しました。綴りとか今と違ったりするんでしょうかね、調べてみようと思います。

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宮田江美子さんの『Little Damascus 4』は

名古屋市民ギャラリー栄7F第三展示室にて

2012年3月18日まで(9時?18時)