NINSシンポジウム事前取材**松沢先生

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とても今さらながら、NINSシンポジウム事前取材に関して、簡単に記事を。

 

当然、NINSのシンポに関わるのは初めてだったわけだが、実に色々なものを見せられ、そのぶん考えさせられた2日間だった。

 

まず、9月2日、松沢哲郎先生@霊長類研究所。

いつも通り過ぎるばかりだった名古屋に、人生で初めて降り立つ。

地下鉄と地下街が発達している、以外はどことなく我が地元、広島に似ているなぁと感じた(広島は三角洲由来の街ゆえ地盤が弱く、地下を掘り起こせない)。

駅や街の雰囲気、道路の走り方など特に。

と、故郷に想いを馳せながら、シロノワールなど賞味しつつ、初名古屋に満足した翌日。

 

早朝から名鉄に乗って犬山市、霊長類研究所へ。

タクシーから降りた瞬間、すごい猿の鳴き声がする。若干、それらしい臭いもする。

そこへ松沢先生が颯爽と現れて、いよいよ長い取材の始まりである。

 

早速、チンパンジー・アイの勉強部屋へと通される。

エレベーターでやってきたアイを見ての感想は、やはり、「でか!」だった。

昔からテレビでその存在や「天才」ぶりを見知っていたとはいえ、現実に、雄叫びをあげて目の前に座るアイには、相当の迫力があった。

松沢先生もおっしゃっていた通り、我々のチンパンジー(ひいては霊長類全体、動物全体)に対する知識や感覚が、いかにメディアに捏造されたものであるか。最初から、思い知らされる。

 

それからの10時間は、驚きと納得の連続であった。

アイとアユムの勉強風景を見学したり、高いやぐらの並ぶサルたちの遊び場をながめたり、350円で大変美味しい定食をいただいたり。それから部屋で先生のプレゼンを聴いての質疑応答、などなど。

いわゆる「理系知識」の著しい欠如を自覚している私としては、今回のテーマ「脳科学」に対して、ちょっと身構える部分もあったのだが、それは全くの杞憂であった。

そもそも、私のもつ「科学者」のイメージというのは、自らの知的好奇心のみに動かされ、ただ目の前の課題に取り組んでいる人、という感じだった。偏見を付け加えるなら、ちょっと社会不適応気味の。

しかし松沢先生にしろ、次の宮下先生にしろ、全然そんなことはなくて、特に松沢先生などは、自分の研究・行動がいかに社会に影響を与えるか、というのを常に考えていらっしゃるようだった。

自分の信念、世に伝えたいこと、そういったものをきつく抱えている。

 

チンパンジー研究に関する話や、それに併せて語られた「そもそも研究とはどうあるべきか」という話は、興味深いものばかりだったが(これに関しては他の方の記事を参照ください)、私としては、生身の研究者というのを感じられたのが何よりも大きかった。

 

 

後日、個人的に動物園に行く機会があった。

松沢先生の、日本の動物園批判を聞いた直後だけに、単純に楽しめない自分がいた。

チンパンジーも飼われていたのだが、当然、やぐらなどはなく、一匹一匹が隔離された狭い檻の中、ちょこっと組まれた台の上を走っていた。

説明書きを読めば、「人工保育でそだちました」とある。

チンパンジーの赤ちゃんは母親依存です、絶対に、母親から引き剥がすなんてことがあってはならない。強く言っていた松沢先生の顔を思い出しつつ、それぞれの園で事情はあるにせよ、なんだかなぁーと考えながら、その場を後にしたのだった。

そういうことを考えられるようになっただけ、マシかもしれないと、思いつつ。

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