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2010年度《見聞伝 駒場祭特設ページ》
2009.7.17 | by admin

大学に行くために金持ちになる必要は無い。

がんばれば、報われる。

そんな世界がどこかにひとつくらいあってもいいんじゃない?

 

「大学に行けるような余裕がある人よりも、明日の生活に困った本当に苦しんでいる人を助けるべきだ」

貧困と東大を結びつけようとすると、こんなことを3人に1人は思う。大学、特に東大というものに人々が持っているイメージが反映されているのだろう。この文章を書いている私も思う。それでも「貧困と東大」をやろうと思ったのはなぜか。

 

簡単に言えば、労力が違うから。

「貧困と東大」でひとつ明らかになったのは、貧困層出身でも東大で普通に生活できるということ。社会の変革だとかは必要ない。ただ、大学に入ればどうにかなるということを知ってほしいだけ。貧困の解決なんてのは考えていない。ただ、貧しいからといって子供の将来に絶望しなくてもいいということ知っておいて欲しいだけ。努力の力を侮らないで欲しいだけ。勉強くらいなら、頑張ればどうにかなるんだから。

もう一度強調しておこう。社会を変革しなければ貧しい人々は大学にいけない、なんてことはない。

 

 

人の生活があり、経済があるところ、貧困は必ずつきまとう。経済が発達すればするほど、富める者と持たざる者の差は広がる。それはある意味で仕方のないことであり、仕方のないことだと切り捨てないために社会保障が生み出された。

派遣村のニュースを見たり、路上生活者と出会ったり、肝心の社会保障が十分にその役割を果たしていないことは明らかである。

そこまで極端でなくとも、私たちの親の世代はまだ望んでも大学に進学できなった世代である。貧乏人は、大学教育などという贅沢品に手を伸ばしてはならないという時代があったのだ。

 

しかし、時代は変わった。

「給与奨学金」や「給付奨学金」で検索をかけてみるといい。何十件という返済不要の奨学金制度が見つかる。国立大学は基本的に授業料免除制度を持っているし、早稲田大学などの一部の私立大学では特に優秀な成績の学生に授業料免除に相当する支援を行っている。

金がないからといって、大学に行けない時代は終わったのだ。日本の社会はそれほどまでに成熟している。

ただ、悲しい時代に大人になった私たちの親は、たぶんそれを知らない。

知らない、ただそれだけで子供に同じ苦しみを味わわせるなんて、悲劇じゃないか。

だから、私はここで大人たちに知らせようとしているんだ。

 

「大学に行けるような余裕がある人よりも、明日の生活に困った本当に苦しんでいる人を助けるべきだ」

再びこの主張について考えよう。

いまの悲惨な労働環境を生み出した原因はいろいろとあるだろう。社会保障が不十分なせいか、それとも他の制度が悪いのか。すると、この問題を解決するには、何かを変えなくてはならない。社会の中にこびりついた何かを。

おそらくそれは法律だったり、社会保障みたいな制度だったり、産業構造のような経済的なものだろう。村上春樹が「壁」と呼んだものかもしれない。

もしそうだとしたら、解決にはものすごく大変な道のりが待っている。本来護ってくれるはずのシステムが壁となって立ちはだかったとき、そして壁にぶつかった時、多くの人は卵のように簡単に傷つき壊れてしまう。そんな卵のように弱く脆い普通の人々が、壁を突き破るのにどれほどの犠牲が出るのだろう。

貧困の問題を解決するのは、それくらい大変なことだ(でなきゃとっくに解決してるはず)

 

「貧困と東大」で扱っている話題は、そんなに大それたことではない。

純粋に大学に行きたい、大学で学びたいと思って頑張れば、どうにかなるんだよ。大きな声でそう叫ぼうというだけだ。制度や法律を変えようって言うんじゃない。貧困層と言われるような経済的弱者でも、いまでは東京大学で学ぶことができるのだ。ただひとつ、「知ってほしい」だけだ。それだけで、解決だ。

20世紀の日本は、そこまで豊かではなかった。私たちの親の世代は、まだ壁にぶつかって傷ついていた。でも、そんな中で積み上げられた先人の努力は、ついに壁を突き破ったのだ。ただ、それを知ってほしい。

 

望めば大学で学べる。

本当は、少し大変なことがある。例えば、日本で一般的な貸与の奨学金を4年間受けていれば、社会に出た瞬間に200万円から400万円近い借金の返済がスタートする。10年以上の歳月をかけて返済するのだ。でも、いいクルマを買うくらいの借金で大学行ける時代になったのだ。

「絶対に無理」と「大変だけどできる」はあまりにも違う。

いまは、もう、「できる」の時代なんだ。

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