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科学入門シリーズ5 ニュートリノ
第3回 大氷河期は来るのか
ニュートリノで輝く太陽。
ニュートリノの観測データからコンピューターでニュートリノの方向を求めて得られた像。
太陽からたくさんニュートリノという電気を持たない粒子が地球に降ってきているお話をしました。
たくさんのお金を使って大きな観測装置を作り、苦労して太陽ニュートリノの観測をしている科学者がいます。何の研究をしているのでしょうか。
太陽は、その中心で核反応を起こしてエネルギー(熱)を作っていることはすでに紹介しました(シリーズ2第1回、第2回記事)。そのエネルギー(熱)は太陽内部の物質中をゆっくりと上昇して表面にたどり着きます。太陽内部の物質は真綿のように熱伝導率が悪いので、中心で作られたエネルギーが太陽表面まで昇ってくるのに数10万年かかります。また、エネルギーが作られる中心部分では温度が1500万度もありましたが、物質を拡散している間に温度が下がり、表面では6000度になってしまいます。私たちは、この6000度で燃えたぎっている球(光球)を見ているわけです。
しかし、私たちが見ている光は、人類が生まれてもいない数10万年前に作られたエネルギーのなれの果てなのです。太陽のエネルギーが直接作られている現場を見てみたいと思いませんか。
ニュートリノは、地球はおろか太陽でさえ易々と突き抜けてしまいます。もし太陽のエネルギー発生時にニュートリノが作られていれば、それらは光の速さで進むので、地球に8分で届きます。つまり、太陽ニュートリノを観測すれば、8分前の太陽のエネルギー発生の現場を研究できるではないか。これが、太陽ニュートリノ研究を研究者が始めたきっかけだったのです。
実際、太陽はエネルギーを作る核反応で、膨大なニュートリノを作っています(シリーズ2第3回記事)。
前回紹介したスーパーカミオカンデ装置は太陽ニュートリノを捕らえるために(そのほかの目的もありますが)作られました。この5万トンの装置を使っても、1日にたった15個の信号しか観測できないことも話しました。
理論家は、過去30年以上にわたって、太陽内部の詳しい状態や、核反応の起こり方を研究してきました。どうやら確からしい太陽の理論が作られたのは、ここ20年ほど前のことでした。何人かの理論家が自分の計算のほうが正しいなどと、喧々諤々の議論をしていました。
そのどうやら確からしい理論を使って計算してみると、スーパーカミオカンデが観測すべき量は、1日当たり30個である、と出ました。しかし、観測量は1日15個。
まあ、2倍の違いがあるけれど、太陽の内部なんてよくわからないのだから、大筋で合っているじゃないか、結構結構、というのが第一印象だと思います。しかし、理論家は、この違いは大変重大だ、と考えたのです。
理論計算は、今太陽が作っているエネルギーを基に行われたものです。しかし、思い出してください。「今」われわれが観測している太陽エネルギーは、数10万年前に太陽中心で作られたものなのです。もし、太陽ニュートリノの数が計算値の半分なら、「現在」太陽中心で作られているエネルギーは数10万年前の半分しかない、と結論しなければなりません。地球温暖化どころではありません。将来、大氷河期が来るぞ、ということになるのです。
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