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科学入門シリーズ5 ニュートリノ
第4回 新発見
カナダ、ニッケル鉱山2000メートル地下に建設中の「スノー」観測装置。
球の表面にブツブツ見えるのは高感度光センサーの光電子増倍管。
前回は、太陽ニュートリノは予想の半分しか観測にかからず、太陽の活動が半分に落ちている疑いがあることを話しました。
しかし、すぐ太陽科学者から反論が来ました。
@太陽の膨大な熱容量を考えると、数10万年で太陽活動を半分にするなど無理がある。 A太陽は、熱発生を安定化するうまいフィードバックがかかっている。中心で熱を作りすぎると、太陽は少し膨張して中心部の温度を下げ、熱発生を抑える。中心で熱発生が少なすぎると、太陽は少し収縮して中心の温度を上げ、熱発生を増やす。このような機構を自動的に行っているので、簡単に熱発生を半分にすることなどできない。 私はそう言われても、太陽ニュートリノを長い間精密に観測して本当に太陽の熱発生量が時間とともに一定かどうか確かめるべきと思います。めったにないことですが、理論には、気づかない不備がどこかに潜んでいる可能性があるからです。理論を妄信してはいけません。
でも太陽科学者にそうまで言われると、素粒子物理学者の意見も聞く必要があります。素粒子物理学者はスマートな連中ですからすぐにこんな返事がきます。
@太陽の熱発生が変わらないとすると、変わらなければならないのはニュートリノのほうだ。ニュートリノには3種類あり、第1番目だけが太陽で作られる。第2,第3番目のニュートリノは物質との反応が第1番目よりも5分の1くらい小さい。 A太陽中心で作られた第1番目ニュートリノが地球に飛んでくる間に第2番目のニュートリノに変身したと考えてみよう。第2番目は反応力が小さいので、ス−パーカミオカンデ装置内で反応する数は第1番目より少なく、ほとんど通り抜けてしまうはずだ。 B第1番目ニュートリノの67%が第2番目ニュートリノになったとしよう。第2番目の約5分の1が反応するだけだから、スーパーカミオカンデ内部で観測されるのは、33%の第1番目ニュートリノ信号と、15%の第2番目ニュートリノ信号となり、合計するとちょうど半分近くになるじゃないか。 Cこの変身が起きるためには、ニュートリノが小さな質量を持っていることと、3種類のニュートリノ間に「混合」と呼ばれる交じりあいが起きている必要がある。ニュートリノの質量と混合は、もし本当に確認されれば、素粒子物理学の大発見だぞよ!
カナダの観測装置「スノー」(上の写真)は、スーパーカミオカンデと同じ第1番目にも感度がありますが、第2,第3番目を別に捕らえることのできる優れものでした。水の代わりに1000トンの重水を使っていました。重水1リットルのお値段は高級なコニャックのお値段と同じくらいですから、SNO装置は大変なお金がかかっていることがわかると思います(実際はカナダ政府から1000トンの重水をただで借りました。昨年、観測が終わったので、重水をそのまま政府に返しました)。
スーパーカミオカンデの観測結果とスノーの観測結果を合わせてみると、驚くなかれ、本当に3分の2の第1番目ニュートリノが第2番目ニュートリノに変身していることがわかったのです。大発見だ!
ニュートリノの紹介は一応ここで終わります。後で、この大発見を書きたいと思います。
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