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科学入門シリーズ5 ニュートリノ
第2回 ニュートリノはなぜ何もしないで物質を通り抜けられる?
建設中のスーパーカミオカンデ
前回、ニュートリノの話をしました。ニュートリノは、地球のように大きな物体でも何も反応しないで易々と通り過ぎることが出来ます。
この現象は想像を絶するらしいですね。ニュートリノだってツブツブだろう。机にぶつかったらなぜ跳ね返らないの?神岡の地下観測所を見学に来た人たちからよくこのような質問を受けました。
今日は、この質問に何とか答えてみようと思います。
まずニュートリノを考えないで、普通の物体に粒子をぶつけたり、光を当てることを考えてみます。(今はあまり大きなエネルギーの運動は考えないことにします。)
@私たちの周りにある物は、原子が電気的に結びついた構造をしている。 A原子の内部や原子間には電気的な力が充満している。 B電気を持った粒子が物に入ろうとすると、物にある電気力が粒子の電気に作用して、粒子の進む方向は曲げられてしまう。 C電気を持たない光も電気力と反応するので、やはり進む方向は曲げられる。
これらのことから、粒子を机にぶつけたら進む方向が曲げられて跳ね返ってきます。また、物を目で見ることも出来るのです。
次にニュートリノを考えましょう。以下のことが大切な点です。
@ニュートリノは電気を持たない中性の粒子だ。 Aニュートリノの身になって物を見てみよう。ニュートリノは電気を持たないので、物はまったく違ったように見える。 Bニュートリノは電気と違った「弱い力」で物と反応する。 C弱い力で見ると、原子はひとかたまりの球として見えず、その代わりに、原子を作っている電子とクォークが見えてくる。 D弱い力で観察すると、電子やクォークの大きさ、それにニュートリノの大きさも、極端に小さい(電気的な半径でなく、弱い力の半径を考えよ)。 E原子は、とても小さな電子とクォークで出来た、スカスカの構造をしている。 Fニュートリノを原子に打ち込むと、小さな粒子のニュートリノは、スカスカの原子を何の反応もせず、だから進む方向も曲げられずに通り過ぎることができる。 G原子があまりにもスカスカなので、原子がいっぱい集まって出来た地球でさえも、ニュートリノから見るとスカスカの構造に見える。だから地球でさえ、反応もせず、進む方向も曲げられずに突き抜けることができる。
これが、ニュートリノが地球や太陽でさえも突き抜ける理由なのです。弱い力のみで見渡すニュートリノの身になって考えることがコツです。
原子がどのくらいスカスカか数値で示しましょう(太陽から来るニュートリノの持っている程度のエネルギーを考える)。
@仮に、原子の大きさを、太陽から冥王星までの半径の球、つまり太陽系の大きさまで膨らましてみる。 A同じ比率で、電子、クォークやニュートリノを膨らましても、それらの半径は10cmくらいの大きさにしかならない。 B水素原子を太陽系くらいの大きさに膨らましてみよう。水素原子は、太陽系くらいの大きさで、内部に何もない真空の球の中に、10cmくらいの大きさの電子やクォークが4個散らばっている、というくらいのスカスカさである。クォーク3個は原子の中でもっとかたまって存在するけど今の議論に影響しない。
想像してみてください。
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