本企画の趣旨はきわめて単純である。
マルセル=プルーストの「失われた時を求めて」読破しつつそれにかかる時間を計っていくというものだ。
要するに本企画はその本質において単なる駄洒落であり、どれだけ飾り立てようとこのくだらなさを糊塗することは叶わないであろうという悲しい運命を背負っている。
そもそもなぜこのような企画が生まれたのか説明しておく必要が、ないと思うが説明しておく。発端は私=上田がさる事情で「失われた時を求めて」の第一章を読む羽目になったことにある。ある夜蕎麦をすすりながらゼミ生の坪井、岡田両氏と語らっていた。そこで私が我が身の不幸を、つまりこれから16行32列の文字列を1065回も読み込まねばならず、そのために私の次の金曜日は失われるだろう、ということを話し、また全編ではそれが新潮社文庫の全13巻中の2巻にすぎないということが明らかになると、私たち三人は、互いに三人がこの「20世紀を代表する」「世界文学の最高峰」に対する共通の理解を形成しつつあることに思い至ったのである。
果たして読み終えた後「失われた時を求めて」いるのはプルーストではなく私たち自身ではないのか?「20世紀で最も重要」な小説を読むために一体どれほどの犠牲を払わねばならないのか?この美しい主題に対して筋違いな非難が浴びせられた。
企画は取り敢えず13巻読み終え、それにより私たちが何をどれだけ失ったか求めるところから始まる。
13巻読破できるメンバーがどれほどいるかはわからない。しかし脱落者も歓迎だ(?)脱落していくことも企画の一部と考えている。兎に角皆さん本を手に取って読むのに要した時間を計ってくだされば企画の趣旨としては十分である。
しかし既に死屍累々。。どうぞ温かく見守ってください。