そんなところで走っちゃダメ!
ミスコミュニケーションの実例として伊藤さんはある公園のスロープの話をした。「障害者の方にももっと公演を利用してほしい」という行政の思いがあり、ある公園にスロープが設置され右のようなマークが付けられた。ところが障害者の方があまりスロープを利用していないことが判明する。実際、調査をしてみるとあるエピソードが浮かび上がった。ある障害者の方が道を通ったとき、親子連れがいて幼い子供が無邪気にスロープを駆けていった。その際、母親が「そこはあなたが通る所じゃない、あなたはちゃんと階段を歩きなさい!」と子供を叱った。これを見て、その障害者の方は「そうか、子供が使っちゃいけないようなところを私たちはあてがわれているのか」と感じたそうだ。そもそもスロープを利用するのは障害者のみならず妊婦や高齢者もいるはずである。考えるべきはスロープのマークが何故これではいけなかったのか、ということだったのだ。もしこのマークを単に大きくオシャレにしたならそれは全く逆効果だったということになる。
伊藤さん まず相手の心の動きに自分がどうやってタッチするか。その心の動きに対して何ができるかを考えるのがコミュニケーションなのです。
ここまで話して第一部が終わった。要約すれば、「コミュニケーションはインフォメーションでもロジックでもない。相手の前提を考えて伝え方を変えていくこと、相手の心の動きに対して何ができるのか考えることだ。」だんだんわかってきた。つまり、好きなあの子に伝えたいことがあるなら見た目を着飾る前に、何で今のままでは付き合ってもらえそうにないか、考えることから始めないとならない。性格か、趣味か、見た目か。それを考えてから行動すべきなのだ。
ただ、相手が好きなあの子のただ一人なら良いのだが、見聞伝が発信される場所はインターネット、相手は不特定多数になっている。こんな時、どうすればいいのだろう。その話は第3部へと引き継がれていく。