これ、俺のことだ!
伊藤さん 結局、僕もこういう特集をやる時に忘れないようにしているのは、取材って進めていくとだんだん賢くなってわかってきちゃうじゃないですか。でも、やり始める前はみなさんが考えている読者と全く同じ状態でして、自分はわかっていないんです。何がわからなかったのか、なんで僕は興味をもてなかったのか。そこの伝わること・伝わらないことというのは常に僕の中で考えています。さっき言ったキーワード「自分事化する」、どうやったら「これ俺のことだ」って思えるのか。100%思うことなんて難しいですがそういう風に思える切り口というのは必ずあるはずなんですね。僕自身はそういうことを考えながら媒体をつくっているんで、いわゆる既存のメディアの視点から見たら非常に主観的ですし公正中立かはわかりません。学問の世界から見てもそれが知の体系になるかはわからないですが、ひとつの結果としてGTを見た読者の人が実際にそれを読んで何かが伝わって今日のこういうリアクションになっている。それをやるために僕はこういう冊子を発行しているんです。
おそらく僕たちは様々な場面で無意識のうちに「自分事化」を実行してきた。今回、それらの無名・無自覚の行為に名前が与えられ、僕たちは今後その営みを自覚的にやっていく。見聞伝でのいろんな企画。重いものも軽いものも、「どうしてそんなことをしているのか」今回で言えば「どうやって自分事化したのか」を積極的に伝えていきたい。その姿を見て、読者にもその問題を「これって俺にも言える話じゃん!」「言われてみれば私もそう思う!」なんて思わせることができれば、それがその人にとっての「入り口」となることは間違いないだろう。