東大生の親の年収は、平均して約1000万円。日本の50歳代の平均年収が600万円から700万円であることを考えても、高い。
潤沢な資金が投入され、私立中高一貫校に通い、一流の予備校教師の受験対策を受けた人間でなければ東京大学には合格できないのだろうか。
そんな思いを抱かせる数字である。
そのような経済的に恵まれた学生が多く存在する一方で、その対極、貧困にあえぐ家庭からやって来た東大生もまた存在する。学生自身が優秀であったとしても、親の収入が将来を決めてしまうかもしれない。実に憂慮すべき事態ではなかろうか。
しかし、もはやかつての苦学生のイメージは適切でないかもしれない。極端に経済的基盤が脆い学生には、ごく少数の学生に対してではあるが、公益法人などから返済不要の奨学金が与えられている。さらに、東京大学では、400万円未満の給与所得しか収入がない家庭に対して基本的に授業料全額免除を行うと宣言している。
社会は、若い希望に、明日の日本を背負う若者に、手を差し伸べている。
ここで二つの疑問が残る。
そもそも大学へ行くだけの金さえない若者はどうなるのか?
学生を支援しているのは「公益法人」「大学」であり、国は支援をしないのか?
人しか資源がない、というこの国で、これはどういうことなのだろう。
「貧困と東大」プロジェクトでは二つのことを目指している。
ひとつは、東京大学でのマイノリティー、経済的に苦しい思いをしている東大生の置かれている状況を明らかにする。
二つ目は、家庭が貧困層であっても、東京大学は現実的な進路となりうるのかを検証し、日本の教育システムが平等を実現しうるのか考察する。
このプロジェクトを通して、日本の大学生がどのように生活を成立させているのかを見つめていきたい。
最後に、私がこのプロジェクトを立ち上げる決心をした理由を書いて結ぼう。
「お前を東大に行かせる金は無い」高校3年の春に、親は私にそう告げた。
しかし、私は現に東京大学の学生である。
知らないということは、存在しないということだ。救いの手も、恐ろしい現実も。
なお、ページ上部の画像は東京大学の行う学生生活実態調査2007年度版から取った。
他にもおもしろいデータが見れるので「学生生活実態調査」で検索してみてほしい。