立花隆、開口
伊藤さんに僕たちのサイトを見た感想を聞いてみた。実はあまり第三者の意見というものに触れたことがなく興味があった。
伊藤さん ネットだからターゲットってすごく絞りづらいと思うんです。海の中に投げ込んでるようなもんですからね。ネットでどう見せるかというのはやはり専門的なスキルが必要で、どこにリンクを貼るかとかいう話になりますけど、そもそも僕はさっき心の動きって言ったと思うんですが、」やはり最終的には自分が興味を持って調べたことだけど、こういう気持ちの人に、ここを通過したら、こういう気持ちになりました、なってもらいたい、みたいな感じが「伝えたい」という欲求に近い行為だと思うんですよね。みなさんが伝えたいって思う人たちがどういう心の状態なのか、それをどういう心の状態にしたいのか。例えば見聞伝を知って「オレ頭良くなったぜ」っていうのも伝えたい目的かもしれないし、これはマスメディアがずっと考えて来て出来ていないことですが、キッカケだけじゃなくアクションまでさせたいのか。「貧困と京大」といってそれぞれの大学にこの問題を考えさせたいのか、誰にどういう気持ちになってもらいたいのかということをデザインも含めて考えないと正解って見つからないと思うんです。そのあたりのすりあわせはした方がいいと思うんですよね。
すると楽しそうに聴いていた立花先生が口を開いた。
立花 僕はちょっと違う意見を持っていまして。インターネットというのは極めて不思議なメディアであってターゲットのことはあまり考えなくていいんじゃないか、考えれば考えるほど伝わったかどうかということが気になりますよね。けれど実際やってみるとまったく思いがけない人たちに伝わって反応があるんですよね。ゼミのある時期は割と丹念にログを見て実際にどういう人が見たのかを調べたことがあるんですよね。そうすると本当に全く不思議な人が不思議なところから見てまして、伝わり方もこちらが考えているものと全然違うんですね。だからコミュニケーション論というとやはり、ターゲットがありそれに伝わったかどうかが気になりますが、僕はこれは本当に自分が発信したいことを発信しているだけで自然に伝わる所には伝わってるんだからそれで十分なんじゃないかと考えるのが正解なんじゃないかと最近は思っているんですよね。ターゲットを考えれば考えるほどさもしさが出るようなつまらないコミュニケーションになっちゃうと思うんですよ。あくまで自分が主体的に発信するそちらの方に気持ちを集中させた方が結局は良い発信になるんじゃないかという気がしますけどね。
再び伊藤さん。今度は選挙カーの話を持ち出した。
伊藤さん 渋谷で国会議員が来てやってるんですが、確かに目の前に若者はいっぱいいるんですよね。でも誰かの心に響いているのか。それで心を動かされて泣く人がいるのかと考えると、やはり伝わってないなといつも思うんですよ。僕は表現者なんでやっぱり心を動かしたいんですよね。選挙カーで演説している人には、僕はなりたくない。というところから、じゃあそれをやるためにはどうしたらいいんだろうというスキルとして今日は受け取ってもらえればと思います。