江戸時代を知っている人と話したことがある。
第3号のタイトルは「roots」。いくらグローバル化する現代とはいえ島国に生きる日本人は、自分が何者なのかという意識をあまり持たない。そこからスタートし、漠然とした人間のルーツ(人類はアフリカで生まれたといわれている)を考えることから最終的に「苗字」というところに行きついたと言う。確かに自分の名字のなんてよっぽど珍しいものでない限り調べないだろう。伊藤さんは戸籍謄本を取り寄せて家系図を紐解いた。ちょうど4世代遡ったところで江戸時代に辿りついた。
伊藤さん 4世代前ってどういうことか。皆さんが今話すことができるおじいちゃん・おばあちゃんがいますよね。そのおじいちゃん・おばあちゃんがみなさんと同じように話したことがある人、その人が江戸時代の人なんです。だからみなさんは「江戸時代に生きた人」と話したことがある人と同じ時代に生きている、そういう距離感なんです。これは僕は結構衝撃で、坂本竜馬とか憧れてはいたけれど自分とのつながりはまったくなかったわけです。それが自分が話したことがあるおじいちゃんおばあちゃんが、もしかしたら竜馬と会っている人と話したことがあるかもしれない。このことを知って、僕には江戸時代との距離が全く違うように感じられたわけです。
これを聴いて、僕も衝撃だった。自分の祖父祖母が僕たちと同じような年齢のころ、彼らは自分の祖父祖母から江戸時代の思い出を聞かされていたかもしれない。「江戸時代」という教科書の文字としてのみ在ったワードが現在とリアルにリンクする形で迫ってきた。江戸時代を自分事化できた、ということだろうか。