避妊してほしい。
なるほど、伝えようとする相手には前提がある。伝わって欲しいなら相手の前提に合わせて伝え方を変える。では「前提を考える」とはどういうことなのだろう、どうやって相手の前提を読み解けばいいのだろう。
今度は「AIDS予防キャンペーン」を例にとっての説明が始まった。
あるNPOがアフリカで広報用のパンフレットを使ってAIDSに関する啓蒙活動をしていた。しかし、あまり効果がなく、さらなる対策をしたい。どんなアイディアが良いだろうか?
伊藤さん こういう課題に直面した時には、アイディアを思いついた瞬間にそこから離れられなくなっちゃうんです。
例えば、こんなアイディアが挙がってくる。
- ポスターをオシャレにすればいいんじゃない?(一番よくあるらしい)
- コンドームのパッケージをメチャメチャかっこよくしよう!
- テレビCMで啓蒙しよう!
- コンドームの使い方を教えるイベントを開催したらどうだろう?
- 有名人を読んでチャリティーライブをやろう!(伊藤さんは一番ダメなパターンと言った)
伊藤さん どれもお金をかければ何かしら効果はあるかもしれません。でも僕らの仕事はコミュニケーション、課題を解決することなんです。それを考えて大事なことはなんだったか。「効果がなかった」ということです。なぜ効果がなかったのか、どうして伝わらなかったのか。これを考えなければ、コミュニケーションの仕方は決められません。
- パンフレットが読みにくかった ⇒ デザインを変える
- パンフレットの存在を知らなかった ⇒ 流通の方法を変える
- AIDSを怖いと認識していない ⇒ 知識を伝える
- コンドームの使い方がわからなかった ⇒ イベントをひらく
もちろん、デザイン的に優れたデザイナーを入れればある程度の認知度は必ず得られますし、見聞伝も良いクリエイターを使えば普通に出すよりは読んでもらえるものになるかもしれません。でもこういう問題ってデザインとかだけで解決できないことってたくさんあるんです。そもそも存在を知らなかったんなら流通を変えるしかないですよね。なんとか目に触れるように流通の仕方を変えない限りいくらオシャレにつくってもそれは相手には伝わりません。こういう風にコミュニケーションの課題によって表現方法は僕らの現場でも変わってきます。