立花隆+東大立花ゼミ シンポジウム事前取材
9月4日 東北大学 二間瀬敏史先生
9月3日。吉田先生の取材が終わり、自宅に帰って機材を準備する。夜行バスで仙台に向かうためだ。二間瀬先生は、東北大学青葉山キャンパスに研究室をお持ちで、東北大学理学部天文学教室のリーダーだ。
仙台は、森の都と呼ばれるだけあって、市内にもあちこちに緑があふれ、きれいな街だな、という印象を受けた。青葉山キャンパスも、仙台駅からバスで15分ほどだが、まさに「青葉の山」に囲まれた、自然の中にあるキャンパスで、天文学の研究にも環境がよさそうである。(街の明かりはなるだけ遠い方が良い)
予定より少し早く到着してしまったが、二間瀬先生は快く教室を用意してくださり、当日の講演を模したお話をしてくださった。
さて、今回の話題のひとつ、「暗黒物質」だが、それ自体を直接検出することにはまだ成功していない(神岡のXMASS検出器はそれを試みる装置の一つである)。素人が聞くと、「検出できないのに、なんで暗黒物質があるってわかるんだ!?」という疑問が生じる。そこで登場するのが「重力レンズ」なのだ。
アインシュタインの理論によると、質量がある物質は周囲の空間をゆがめ、光の進路を曲げてしまう効果があることがわかっている。この理論を使うと、地球から遠くにある銀河から出た光は、もしその銀河と地球との間にほかの銀河があれば、その質量によってゆがめられる。つまり、地球には、くにゃっと曲がってしまった光が届くというわけ。その「曲がり具合」を研究すると「手前にどの程度の重さが密集しているか」がわかってしまう! これが「重力レンズ効果」を利用した代表的な研究だ。この他にも、宇宙のはるか彼方の多くの謎に迫ることができる。(詳しくは素人の僕が説明するよりも、二間瀬先生の講演をじっくりご堪能を!)
「暗黒物質や暗黒エネルギーを観測する、ダイレクトで一番強力な方法が、重力レンズなんです」と、二間瀬先生は切り出した。それから、すばる望遠鏡の話、宇宙の大規模構造の話、天文学の歴史の話。「何でも質問をどうぞ」と言ってくださるものだから、こちらも遠慮がなくなってしまって、2時から始まった取材は5時間近くに及んだ。
著書も多く、物理学の方向からのアプローチも得意な二間瀬先生。当日、限られた時間の中で、どこまでかみくだいて説明してくださるのか、楽しみである。
← 前のページ / 次のページ →
シンポジウム特集へ戻る |