「先を読む頭脳」

「先を読む頭脳」(羽生善治、伊藤毅志、松原仁著、新潮文庫)
一週間前の生協。視力が悪いにもかかわらず、数メートル離れた所から表紙が目に入り「これは!」と思った。400円で薄いので即買い。

羽生先生の講演録+認知科学と人工知能(=コンピュータ将棋)研究の視点から説明
で構成されている。研究者視点からの解説が入っているのがこの本の面白いところだ。
強さの理由をメタ認知(自分の思考を客観的に捉える能力)、自己説明能力といった言葉で説明している。

読んでて思わず驚いたのが、盤面上の駒の配置を答える問題。
将棋には敵味方合わせて40枚の駒がある。
そのうち飛車、角、銀の8枚の配置だけあって残りは文字を伏せた盤面を3秒だけ見る。
それを何もない状態から完全に再現できるという。
形が頭に入っているからこそ、だとは思うけど3秒見ただけで分かるものなのか…

他にも将棋のゲームとしての特殊性も面白い。
オセロを考えると分かりやすいが、将棋以外のゲームは終盤に向かって収束する。(局面が落ち着く。あまり細かく読む必要がなくなる。)
それにくらべて将棋は終盤に向かって発散するという。
細かく読んで大駒を捨てでもとにかく詰ましに行く。終盤に向かって緻密さが求められるのだろう。囲碁で言うと詰め碁が終盤に控えている、ということか。
想像するに将棋の終盤のスリル感は惹かれるものがありそうだが、「将棋は特殊なので、他のゲームをやっても直接的にはプラスにはならない」そうだ。残念。

講演自体は認知科学と人口知能に限らず幅広く、それに研究者の説明付きという、薄いながらも面白い本だった。
にしてもこれだけで一週間かかる遅読っぷりを何とかしたい。

2 Responses to “「先を読む頭脳」”

  1. amemiya said:

    12 月 13, 09 at 16:11

    囲碁はかなり数学的な要素が強いが、将棋は空間を感覚的に認識する能力も重要になるらしい。
    形を見て分かるというような体感をともなった思考は、ある種の思考の短縮を可能にしているという。実際ある程度慣れた人は将棋を指す時は形的にありそうな手だけを集中して読むので、可能な全ての手をベタ読みするよりもよほど効率がいい。

    そのあたりが今でもプロを破るコンピュータが現れない理由なのだろうけど、数年後どうなっているかは分からないですね…。

    [WORDPRESS HASHCASH] The poster sent us ‘0 which is not a hashcash value.

  2. 西田 祐木 said:

    12 月 13, 09 at 23:28

    将棋は小学生の時少しかじっただけなのであくまでイメージですが、
    囲碁の方が読みに依存してる度合いは強いと思います。

    形による判断はどのゲームでも大体ある気がします。
    囲碁であれば、愚形という悪い形と好形の典型例をある程度のレベルになれば覚えます。
    オセロの「隅をとれば有利」と考えるもその一つと言えるかもしれません。

    思考の短縮というのが人間には不可欠です。実際囲碁をやってても、初手で考えるのはせいぜい5通り以下です。
    この本にはどんなプロ棋士であっても一分で考えられる手は数十手と書いてありますし、
    面白いのが、盤面を見せられて次の手を答えるという問題で、羽生先生が3秒で即答した例がありました。

    将棋でトッププロに勝つのは2030年とか言ってましたが、そう遠くなさそうですよね。
    囲碁はどうなるのかな…盤面が2の361乗通りあると考えると果てしないですが
    (単に盤がでかいから追いつくのに時間がかかるっていうのも変な話だ…)

    [WORDPRESS HASHCASH] The poster sent us ‘0 which is not a hashcash value.


Leave a Reply