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逍遥

 

朝から渋谷で用事を一つ終え、天気が良いから駒場まで歩こう、と思う。

机に向かっている時間より、一人でぼんやり歩いているときやお風呂に入っているときにこそ良いアイデアが生まれるような気がしている。

修士論文の執筆を開始したこの一年は、部屋に籠りながらも良く歩かねばならない。

 

松濤の桜のそばをゆっくりと歩く。

昨夜まで読んでいたLes Cahiers de médiologieのことを考え、「プロメテウス」の問題をめぐって自分の知識を整理する。

「書きたい事は山のようにあるだろうが、書かない勇気が大切だ」という指導教官の言葉を思い出しながら。

それは師の指揮の哲学-盛るのではなく削る美を-に通ずるところがあって、ハッとさせられたのだ。

 

 

温かい陽射し。サマージャケットを引っ掛けて軽装で歩くのが気持ち良い。

ぐるぐると歩き、思考がひとつ纏まったころ、美味しそうなランチの看板を見つける。紙に書き出しながらとりあえず珈琲といこう。

就職した友人たちに比べてお金の余裕はないかもしれないけど、今自分が過ごしている時間が限りなく贅沢な時間である事を疑わない。

また新しい春の訪れを、僕は僕なりに慈しむだろう。

 

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