November 2013
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何だか分からないものに賭けて。

 

昨夜の「第九」通しレッスンで燃え尽きた。

充実と共にある種の呆然。三楽章のとき、後ろで見学されていた方がぼろぼろ泣いていらっしゃったということを後から知る。

僕の演奏はバランスを欠いたところもやれなかったことも山のようにあって課題だらけだが、問答無用に涙を溢れさせてしまう「第九」という音楽は、

本当に凄い曲だと改めて思う。朝起きても第九の脈拍が収まらず、他の事を一切考えられないまま夕方。

振り終わってからずっと続いていた呆然とした余韻が収まり始めて、今になってなぜか涙腺が緩む。

門下の先輩の「子供の情景」のレッスン後の素敵な表情とともに、昨日は何か忘れ難い時間があの空間に訪れていたのは間違いない。

 

休学中にベートーヴェンの交響曲を一つずつ教わっていった。一番、二番、四番、五番「運命」、六番「田園」、七番、八番、三番「英雄」、そして九番。

第九だけは一楽章を振った時点で「君には早すぎる」と言われてそれ以降保留になっていて、これを最後まで師に見て頂ける日がやってくるのを

一つの目標に過ごしていた。もちろん今だって僕には早すぎる曲なのだけれど、師がお元気で居て下さる間に、第九を最後まで見て頂き、

そしてベートーヴェンの交響曲を拙いながらも全て振らせて頂けたことを幸せに思う。

 

 

二十六歳、学生。

今やらなければきっと一生後悔する。根拠も無いその直感を信じて過ごした数年間だった。

失ったものは多かった。とても自分勝手に生きて、両親には迷惑ばかりかけ、友人たちを、愛した人たちを随分と困らせた。

しかし同時に、一生を通じて自分の人生の中心にあるであろうものを僕は得た。それが形にも言葉にもならないものだとしても。

自分を取り巻く時間の流れに抵抗して、なんとか間に合った。休学中にやり残した夢が一つ叶った。