June 2013
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光と琵琶と石畳

 

この時期の陽が落ちて暗くなった駒場キャンパスをゆっくり歩くと、琵琶の良い香りがする。

明るい時には気付かないものだ。太陽が沈んだことで視覚以外の情報に敏感になる。

 

落ちている琵琶の実を拾い上げ、掌で転がしながら銀杏並木を歩く。

遠くから風に乗ってマーラーの交響曲第五番を練習する若々しいトランペットの音が聴こえてくる。

少し歩くと、テニスコートから楽しげな声が上がっているのに気付く。

石畳の感触を足下に感じながら、一人でゆっくりと歩く。

 

歩きながら考える。

昼間、卒業論文を執筆している後輩と議論したヴルーベリの「貝殻」とアール・ヌーヴォーの関係。

先程の小林康夫大先生の授業で議論した「静物画」の問題。

シャルダンとセザンヌの静物画。静物画とは何なのか。

人工物と自然物(ただし、自然から切り離された自然物として)の組み合わせがもたらす秩序。

絵画は現実世界にある秩序を描くのではなく、絵画が秩序を与えるのか。

絵画だけが実現可能な微細なordreを生み出す喜び。

絵画から転じて、僕の研究テーマである光の問題に引きつけた時に何を言い得るか…。

 

明るすぎない電灯が等間隔に取り付けられた銀杏並木を端から端まで歩き、空を見上げて立ち止まる。

たぶん、僕はいま、幸せだ。