「もの食う人々」 辺見庸 角川出版
この本は言わずと知れたベストセラーだ。
バングラディシュから始まってベトナム、クロアチア、ギニア、韓国、などなどなど、各国における「食べる人々」を取材してまわった記録である。
各々の地で、その歴史、文化、経済、主義、宗教、それらに翻弄され、あるいはもがく人々が、辺見庸の美事な文章と相まって「個」として生々しく表現される。
そこではネオナチも、ロシア海兵も、ブガンダ国王も、あるがままに、目に映ったすがたそのままに描かれている。等しく、むしゃむしゃともの食うその有り方は、自分の思い描く通り一遍のイメージの枠からじわりじわりとにじみ出て行く。
僕らが捉えている断片の断片の断片の「全体」なんかより、たった一人であろうと、その人間の実在を知る事が如何に重みをもっているか思い知らされた。
そして、この本には、既成の概念を持たず事実を事実と受け、敢えてストーリーを作らない辺見庸の思い、むしろ悩みが込められている。本書の中でも辺見庸は葛藤し続けている。
そして、僕はこんな作家すてきだな、と思う。
が、しかし、なんてったって、この本にはすてきな表現が溢れているのだ。
「澄んだ声などひとつもない。どれも砂をまぶしたようにざらつき、錆びて澱んでいる。」
なんて華麗な比喩だろうと思う。まるで、一つひとつの文章に、世界が立ち現れが見えるかのよう。
「文章が好きになる」という体験をこの本は僕に与えてくれた。
そんな記念すべき本だからこのシリーズ一冊目に選んでみた。書評という感じではなかったけど、僕の大好きさ加減ぐらい分かってくれたと思う。笑

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