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  ゼミ主宰 立花隆より、見聞伝の巻頭言です。

  「KEN BUN DEN」は「見聞伝」



 第一次立花ゼミ('96年)のタイトルは「調べて書く」だった。調べて書いたものは、インターネットのページを通じてどんどん発信した。調べて書くだけでは自己満足に終わってしまうが、読者にメッセージが伝わり共感してもらえれば、書いたものが生きてくる。そこで、翌年ゼミのタイトルを「調べて書く、発信する」に変えた。

 第二次立花ゼミ('06年)も、基本的にやっていることは同じである。「調べて書く、発信する」を続けているわけだ。発信するメディアとして、インターネットに科学メディアサイト「サイ」を構築した。一昨年から私は駒場に新しく生まれた大学院総合文化研究科の「科学技術インタープリター養成プログラム」の特任教授というポジションについたので、発信する内容も科学と技術に絞ったわけだ。

 今の日本では科学技術の現状と未来を一般社会に伝えるメディアがあまりに弱体化している。OECDの調査でも日本は科学技術に対する関心も理解も世界で一番低いグループに属するという結果が出ている。

 そういう状況を少しでも変えられないかということで、学生たちが関心を持ったさまざまな研究現場を片っ端から訪問しては、そこで見聞したことを伝えるページを作っていったわけだ。「サイ」のページは私がNHKで作ったドキュメンタリー番組「サイボーグ技術が人類を変える」と連動させたので、最初の1ヶ月で100万ヒット、その後半年間で累計1000万ヒットを記録するという大ブレイクを果たした。

 その後私は、大学院総合文化研究科から大学院情報学環に身を移したが、駒場の全学自由ゼミナールはそのまま継続した。

 しかし、今度は、コンテンツを科学技術に限らないことにした。どんなものでも、学生が興味を持つもの全体を対象とすることにした。そこで、インターネットの発信サイトの名前も「KEN BUN DEN(見聞伝)」とした。「見聞伝」とは、「見たい聞きたい伝えたい」の略で、要するに、「調べて書く、発信する」と同じ意味なのだ。


 とにかく、参加する学生たちが、知的好奇心のおもむくままに、あらゆる対象に迫って、質問攻めにする。そしてそこで見たこと聞いたこと、取材しながら考えたことをどしどし発表していこうというページである。

 若い世代の知的エネルギーとみずみずしい感性があふれたページを作っていきたい。

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